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2年ほど前に、この会社に入った頃は「結核なんて日本では問題ではない。もう“卒業”したこと。アメリカで騒いでいるのはHIVの患者さんの結核が増えたからで、日本ではこういう心配は(少なくとも、もうしばらくは)無いこと。」と、思っていました。
ところが、ちょっと注意して聞いてみると、何と結核は増えているというではありませんか。いわゆる先進国のなかでは最悪でしかも減るどころか近頃は横ばいと聞いてまたびっくりしていました。でもきっと、老年人口が増えたため再燃した患者数が増加したのと、海外からの渡航者の増加、海外への渡航者の増加によるものと思っていました。 そして昨年には、ここ何十年ものトレンドがくずれて患者数が上昇したというニュース。加えて、結核に対する国の予算が増加し、TVや雑誌で結核がとりあげられることが多くなり、院内感染のセンセーショナルなニュース、そしてつい最近の「非常事態宣言」と、指数関数的に危機感がたかまりつつあります。 1.統計から見た世界の中の日本
さて、過去のものと思っていた日本の結核が、現在それほど大騒ぎしなければならないものならば、改めて、世界における日本の結核の罹患状況はどういうものなのか、WHOのウェブサイトを訪ねて、各国の罹患率をみてみることにしました。97(*96)年の統計で10万人あたりの罹患率を少ない国から並べてみると...
という具合でした。 詳しくは各国の罹患率:グラフ1/表1を参照して下さい。(注:青字はG7各国、厚生省のホームページの数字と日本の数字は少し違いますが、年度の取り方が違うためだと思います。)
いわゆる先進国から順に罹患率が低いわけではないということもわかります。しかし年次推移をみてみると日本以外のG7の諸各国は数年前にちょっとしたピークをむかえて以後確実に罹患率を低下させています。(WHO)日本はこれらの国々と比較しても、もともと格段に罹患率が高く、しかも底を打って増加するトレンドになっています。さらに、厚生省の資料をもう少し詳しく見てみると、日本で最も罹患率の低い長野県16.9(それでも日本以外のG7中で罹患率の最も高いドイツに及びません)、最も罹患率の高い大阪府は68.5という数字になっています。各国の罹患率を示したグラフ1に、これらの日本の数字を示してみました。
他のG7の国々に比べ、日本の結核罹患率は高いけれど、これはもともと高かったからなのでしょうか?確かに、80年の罹患率を見てみると、日本は60.7と他のG7諸各国と比べ高くなっています。罹患率の低い順に並べてみると、グラフ2:G7各国の罹患率の変化(1980 vs. 1997)のように、イタリアがアメリカよりも高くなってしまった以外は97年の順序と変わりません。
では、本当に日本の罹患率は他の先進国にいつまでも追いつけないものなのでしょうか?WHOの統計にある、80年の数字と97年の数字を、いくつかの他の国々でもみてみましょう。グラフ3:罹患率の低下した国々(1980 vs. 1997)にあげたのは、80年の時点で日本より罹患率が高かったのに、97年の時点では日本を追い抜かしてしまった国々です。これらの国々で、どのような変化がおこり、また何によって結核罹患率の低下を引き起こすことができたのか、大変興味深い所です。
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