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日本医療検査科学会第53回大会 ランチョンセミナー14

開催地 神奈川
会場 第7会場(パシフィコ横浜 会議センター304)
開催日時 2021年10月9日(土)12:00~12:50
備考 本セミナーは整理券制です。
事前予約をされていない場合は、当日、整理券配布場所にお越しください。
配布日時:2021年10月9日(土)7:00~10:00
配布場所:パシフィコ横浜 会議センター3F フォワイエ

共催:日本医療検査科学会第53回大会
   日本ベクトン・ディッキンソン株式会社

進化する培養検査の自動化と微生物検査室

座長:長尾 美紀 先生 京都大学大学院医学研究科・医学部 臨床病態検査学
演者:上蓑 義典 先生 慶應義塾大学医学部 臨床検査医学

検体検査の現場において自動分析ラインの使用はすでに当然のものとなっているが、微生物検査はその波から大きく取り残されている。現在も、検査室の真ん中には実験机が置かれ検査技師が手作業で検査工程を進めていくというスタイルが一般的である。
しかし、欧米では徐々に培養検査の自動化が普及しつつあり、その波は我が国にも達しつつある。培地塗布およびグラム染色スライドの作成の自動化ツールはすでに国内のいくつかの病院で導入されている。さらに当院では、2019年11月に、培地塗布およびグラム染色スライドの自動作成に加え、培地の自動搬送と孵卵器内での管理のロボット化、さらに培地判読のデジタル画像化を実現させるBD Kiestra WCAを国内の病院で初めて導入し、すでに1年以上安定し稼働させている。この導入により、検査室の分業化の推進や大幅な効率化を達成することができたが、さらに次の段階の自動化へ当院は一歩踏み出しつつある。それは、釣菌作業の自動化である。
これまでも、培地判読をデジタル画像に基づいて実施し、釣菌すべきコロニーの指示は、デジタル情報として記録されていたが、その指示に基づき釣菌作業を行うのは人間という点で効率的とは言えない面が残されていた。しかし自動釣菌モジュールBD IdentifAの導入により、培地判読にもとづく指示をコンピューターに入力すれば、培地からの釣菌をロボットが実施してくれることになる。これにより質量分析での同定に必要なターゲットプレートの準備や、薬剤感受性試験に進むための菌液作成等の作業負担が大幅に削減されることが期待される。培養検査の工程で技師が「手を動かす」部分に関して、これによりほとんど機械化が実現されることになる。
これにより微生物検査技師のあり方が培地判読による判定や、分析結果の解釈、新技術の導入など完全に「頭を動かす」仕事にシフトできることが期待される。このように自動化の進化そして深化により、微生物検査室そして微生物検査技師がどのように未来に向かっていくのか、当院の微生物検査室が目指す姿を通じて論じていきたい。