医療関係者向けのページです

沖縄医療生活協同組合 沖縄協同病院
インフル検査、オンラインで結果入力

キット更新で整備 ミス防止に
沖縄医療生活協同組合 沖縄協同病院
THE MEDICAL & TEST JOURNAL 2018年9月21日

【写真】運天室長(左)と中央検査室の皆さん(後列右から3人目が玉城氏、前列右から2人目が新里氏)
運天室長(左)と中央検査室の皆さん
(後列右から3人目が玉城氏、前列右から2人目が新里氏)
 沖縄協同病院(沖縄県那覇市、280床)は2018年2月、インフルエンザウイルス検査に迅速診断システム「BD ベリター™ プラス アナライザー」を導入し、臨床検査システムとオンラインでつながる新たな運用を開始した。バーコードの読み取りを通じて自動で検査結果が入力される仕組みを開発し、検査が集中する時期でも迅速で正確な結果報告が可能になった。

 同病院は、組合員9万3000人(2017年度末)で作る沖縄医療生活協同組合(沖縄医療生協)が運営。関連する他の2つの病院や6つの診療所、7つの介護施設のセンター病院として、沖縄本島の南部、那覇地区の急性期医療を提供している。2000年4月には県内の民間病院として初めて臨床研修病院(基幹型)の指定を受け、初期研修医の育成にも力を注ぐ。2次救急医療を担い、救急車の受け入れ件数は4824件(17年度)と、県内有数の件数となっている。
 医療生協の病院として差額ベッド料や初診時の特定医療費は徴収せず、社会福祉法に基づく無料・低額診療を行うなど、住民密着の医療サービスを特徴とする。

10年で検体数2.5倍に

写真:運天氏
運天氏
 中央検査室は、臨床検査技師34人(うち非常勤7人)、事務職員1人の計35人が在籍。検体部門は生化学から一般、輸血、細菌、病理までを行い、生理部門は採血室、無呼吸外来室、血管造影室、3つの関連診療所での超音波検査(各週1回半日)などの業務を幅広く行う。
 検体数は、夜間を含め1日平均1580件。技師長にあたる運天芳浩検査室室長は、在院日数の短縮に伴う検査ニーズの増大や救急患者数の増加などにより、病院新築移転後から現在までの10年間で検体数は2~2.5倍に増加したと説明する。
 地上8階建ての病院の4~8階にある病棟からは時間を問わず、専用のリフトにより3階の検査室に検体が到着する。また、一部を除き血液ガス分析装置も検査室で管理し、重篤の救急患者が到着するとさまざまな検査オーダーが届く。さらに細菌検査は夜間帯でも培養検査まで行う。近年、検査業務が増加し、検査業務の負担軽減や効率化が課題になっているという。
 業務量の増加にあわせて18年5月には、夜勤体制を1人から2人に拡充した。休日は検体部門の2人、平日は検体部門、生理部門各1人とし、生理部門の夜勤者は平日夜9時まで、呼び出しで心電図や超音波検査に対応する。働く世代の診察のため以前行っていた夜間診療を受け継いだ体制になっている。
 インフルエンザ検査件数は年間1万1105件(17年度)と全国的に見ても多い。うち55%を小児などの救急患者が占める。
 検査室は、流行期にインフルエンザウイルス検査が集中し検査に使うタイマーが不足するなどの課題に直面。約10年使ってきた検査キットの更新の検討に入った。その結果、以前のキットに比べてコストは上昇するものの、検査感度の向上を求める臨床側の後押しもあって、BD ベリター™ プラス アナライザー(写真①)の採用が決まった。運天氏は、検体検査を普段行わない生理部門の検査技師も夜勤に入ることを考えると「誰でも簡単にミスなくできるようなシステムが必要だった」と話す。
 地上8階建ての病院の4~8階にある病棟からは時間を問わず、専用のリフトにより3階の検査室に検体が到着する。また、一部を除き血液ガス分析装置も検査室で管理し、重篤の救急患者が到着するとさまざまな検査オーダーが届く。さらに細菌検査は夜間帯でも培養検査まで行う。近年、検査業務が増加し、検査業務の負担軽減や効率化が課題になっているという。
 業務量の増加にあわせて18年5月には、夜勤体制を1人から2人に拡充した。休日は検体部門の2人、平日は検体部門、生理部門各1人とし、生理部門の夜勤者は平日夜9時まで、呼び出しで心電図や超音波検査に対応する。働く世代の診察のため以前行っていた夜間診療を受け継いだ体制になっている。
 インフルエンザ検査件数は年間1万1105件(17年度)と全国的に見ても多い。うち55%を小児などの救急患者が占める。
 検査室は、流行期にインフルエンザウイルス検査が集中し検査に使うタイマーが不足するなどの課題に直面。約10年使ってきた検査キットの更新の検討に入った。その結果、以前のキットに比べてコストは上昇するものの、検査感度の向上を求める臨床側の後押しもあって、BD ベリター™ プラス アナライザー(写真①)の採用が決まった。運天氏は、検体検査を普段行わない生理部門の検査技師も夜勤に入ることを考えると「誰でも簡単にミスなくできるようなシステムが必要だった」と話す。

検査システムと接続

 BD ベリター™ プラス アナライザーは、手動測定のほかに自動測定の機能を備え、判定時間経過後に自動的に判定結果をプラス(+)、マイナス(-)の記号で表示する。バーコード読み取り機能を持つ関連製品のインフォスキャンを装着すると、バーコードから読み取った検体IDや検査担当者ID、検査キットのロット番号と判定結果を関連付けてデータ管理できる。データはパソコンへのダウンロードも可能だ。検査項目は、同病院が採用したインフルエンザウイルスのほかに、アデノウイルス、RSウイルス、A群ベータ溶血連鎖球菌の計4項目がある。
 さらに同病院では、自院の臨床検査システムとつながるインターフェースを、沖縄医療生協のシステム会社で開発。判定結果が自動で入力される機能を備えた。
 検査キットの更新を主導した玉城正幸副主任は、以前の目視判定のキットでは検査者によって判定結果がばらつく課題があったと話す。さらに、さまざまな検査結果が一覧で表示される臨床検査システムの画面から入力位置を選び、手動で判定結果を入力する作業ではミスが発生する可能性がある。繁忙期には、インフルエンザウイルス検査の検体が10本同時に届くことも珍しくない。判定と入力の両方のミスを防ぐため、BD ベリター™ プラス アナライザーを採用し、かつ判定結果がオンライン入力される院内システムを整備したという。
 運天氏は、「たとえ年間数件であっても判定や入力のミスは無視できない。判定結果により薬剤の処方が変わることを考えると患者予後にも関わりかねない」と正確な検査結果を報告する重要性を強調する。
 BD ベリター™ プラス アナライザーは3台導入した。検体を滴下したテストプレートや、反応時間を測定するタイマーをひとまとめにできる「プレートラック」(写真②)を活用。複数の検査が並行する場合にはプレートラック上で反応させ、判定時間経過後にBD ベリター™ プラス アナライザーに装着して判定結果を確認してデータ送信する運用とした。  玉城氏は新システムにより、「インフルエンザシーズンで10件を超える検体が同時に検査室に届いても、安心して検査ができるようになった」と評価する。  生理部門の新里尚子主任は、月に数回、当番の夜勤帯にだけ検体検査に携わる。以前の検査キットは「判定結果を読み取る作業も、結果入力の作業も手間で、不安になることもあった」。生理部門の臨床検査技師はそもそも、臨床検査システムの画面を見ることがあまりない。慣れない画面から結果入力位置を探し出す負担は大きかった。現在オンラインで結果入力できるようになり、「だいぶストレスが減った。良かったと実感している」と話す。

ほかの検査でも自動化

 同病院ではBD ベリター™ プラス アナライザーの導入をきっかけにしてインフルエンザウイルス検査の自動化が一歩進んだ。運天氏は、臨床検査技師の業務負担をさらに軽減するため、ほかのウイルス検査でも同じようなシステムを導入していきたいとしている。
 臨床側からは現在、夜間帯のグラム染色の実施が求められているという。診療の質を上げる上で検査室の果たすべき役割は大きい。業務負担の軽減を図りつつ、5月から始めた夜勤2人体制の定着を見極め、さらなる臨床貢献を検討していく考えだ。