投与法など薬剤師が提案
カルバペネム系抗菌薬については、初のチエナマイシンからイミペネム、メロペネム、ドリペネムなどへと改良され、化学的な安定性確保や毒性軽減などのため1980年ごろから、新薬開発が進んできたことを説明。また、投与方法についても、PK/PD理論に基づく投与法として、延長点滴が重症例などで行われていることを示した。
特に過大腎クリアランス(ARC)の場合や、浮腫などの細胞外液の増加、熱傷など浸出液の増加などがあれば、通常の投与量では有効血中濃度が維持できないことも抗菌薬投与上の注意点であることを説明。こうした「PK/PD理論」に基づく投与提案を臨床の場で薬剤師が行っていることを述べた。
またカルバペネム系抗菌薬投与時の注意点として、抗てんかん剤バルプロ酸との併用が禁忌となっているほか、ビタミンK欠乏症が発現してワルファリンの効果が増強する恐れもあることから、ワルファリン投与患者ではPT-INRのモニターを強化する必要があるとした(図:メロペネム添付文書より引用)。
アレルギーの観点で「使いやすい薬剤」
ペニシリンアレルギーにも触れ、米国では患者の1割がアレルギーを申告するものの、多くは下痢や嘔吐などでペニシリン投与が可能なことなどを説明。臨床上重要である、IgEによる即時型、Tリンパ球による遅延型の過敏症は5%未満だとしながらも、ペニシリンとセファロスポリンとの交差反応は約2%で起こるとし、薬剤師が問診で患者の状況などを詳しく確認し必要に応じて処方変更を医師に提案することなどを説明した。
カルバペネム系抗菌薬は、他のベータラクタム系抗菌薬とは側鎖の化学構造式が異なり、交差アレルギー発現の報告も少ないとし、「ペニシリンアレルギーの既往のある患者に対しても選択肢として考慮できる」と述べた。
その上で小阪氏は、薬剤師としてカルバペネム系抗菌薬のASを行う際には、患者病態や検出微生物の観点からカルバペネム系抗菌薬の投与すべき症例なのかどうか、投与法が最適であるかの2点を注意することを指摘した。