病院感染対策を拡充し、MRSA 感染症例を半減(50 人=>25 人)できたと仮定する。
MRSA 感染患者が長期入院(87.6 日:上記報告より引用)しているはずだった病床が、MRSA 非感染症例の入院期間(14.2 日:上記報告より引用)で稼動できることになる。25 人分なので、稼動可能病床数日は1,835 増加する。病床利用率が変化しないと仮定し、平均在院日数で割ってみると、入院患者を121 人受け入れることができることになる。その増加する入院患者がMRSA 非感染症例としたとき、入
院患者増による診療報酬の増加は910,033.8 円(MRSA 非感染例の診療報酬:上記報告より引用) X 121 人=109,702,250 円となる。
病院にとっては、MRSA 感染症例の超過診療報酬のうち半分が減ることになるので、差し引きすると109,702,250 円-217,271,690 円/2 = 1,066,405 円が診療報酬の増加分となる。
また、平均在院日数も約1% の削減が計算される。
モデル病院でMRSA 感染症例を半分に(50 人から25 人に削減)することで、121 人の入院患者増、100 万円以上の診療報酬の増加、1% の平均在院日数減が認められることになる。もちろん、MRSA に感染していない患者のQOL は数字化できないが、感染者に比べて有意に高いことは想像に難くない。
尚、施設により病床数、及び入院患者数、平均在院日数、MRSA 感染症数、並びに患者一人当たりの診療報酬平均等は異なるので、各種状況により施設に対しての経済効果は大きく異なると思われる。
このシミュレーションはあくまでもモデル病院での計算結果ではある、しかしながら、MRSA 感染を防ぎながらの効率の良い診療が国家的視野での医療費削減と、多くの病院の収益の改善、並びに患者の高いQOL 維持に貢献することは明白であるといって、差し支えないと考える。
また、英国での事例のごとく、本邦においても高品質の感染制御によりMRSA 感染症が少ないことを、病院のセールスポイントにすることも可能であろう。
(文責:日本BD 天野泰彦)