表3 生ワクチンを複数回接種する理由
①2回の接種歴が最も大切
麻疹、風疹、水痘、おたふくかぜの予防には、それぞれ生ワクチンがある。これら4疾患については、1歳以上で2回の予防接種歴があることが最も大切である。ガイドライン
3)掲載のフローチャートでも、まずそれが最優先と記載されている(図1)。
麻疹と風疹の予防にはMRワクチンが広く使われている。麻疹と風疹いずれかのワクチンの接種歴が2回、もう一方のワクチンの接種歴が1回の者に対して、MRワクチンを追加接種して差し支えない。
ワクチンの接種歴が不明の場合は、1ヵ月以上の間隔をあけて2回接種する。明らかな罹患既往のある者以外は、2回の接種でこれら4疾患の予防に努めることを原則とする。また、罹患既往のある者にワクチンを接種しても支障はない。
②2回接種が必要な理由
生ワクチンを複数回接種する理由は2つ、一次性ワクチン効果不全(primary vaccine failure: PVF)対策と二次性ワクチン効果不全(secondary vaccine failure:SVF)対策である(表3)
4)。複数回接種を推奨すると、「2回の接種間隔は何年空けることが適切か?」とSVF対策を想定しての質問をしばしば受けるが、適切な間隔は確定していない。PVF対策も同様に大切であることを強調しておきたい。
③抗体検査は必須ではない
ガイドライン
3)にも記載されているが、抗体検査は必須ではなく、抗体価測定を行わずに1ヵ月以上の間隔で2回のワクチン接種を行うことでも支障ない。
数値で示される抗体価は感染防御能を反映する絶対的な指標と考えられがちだが、決してそうではない。一定レベル以上の抗体価をもっていても、当該感染症にかかる場合もある。一方で、抗体価は低くても、当該病原体に対する個体としての総合的な免疫力(細胞性免疫や自然免疫などを含む)が強固であれば疾患には罹患しない。血中抗体価の数値は、個体の免疫力を反映するひとつの代替指標・代用物(surrogate)である。