RSウイルスは、かぜ症候群を起こすウイルスとして最も重要なウイルスのひとつである。RSウイルス感染症は、小児科にとってインフルエンザ同様に重要な呼吸器感染症であり、乳幼児期の呼吸器系ウイルス感染症のなかで最も多いと考えられている(2歳までにほとんどの幼児がRSウイルス感染を経験)。大人(特に高齢者)の感染も認識され、内科の領域でも関心の高いウイルスである。
RSウイルスは飛沫感染とともに、感染性の飛沫粒子が患者の衣類などに残存し、接触してウイルスが付着した手指で口や鼻を触ることで感染する経路、つまり間接的な接触感染に留意する必要があるといわれている。したがって、予防では特に手洗いが重要である。 RSウイルスによる院内感染リスクは高く、病院内の新生児や乳児の感染防止には特に注意が必要であると言われている。米国では、RSウイルスの感染管理に取り組むことが推奨され、まず、迅速に病原体を検出するために組織培養ではなく抗原あるいは遺伝子(real-time PCR)法による検査が行われている。
RSウイルスの院内感染対策について、Maccartneyらは大学病院において感染管理活動の費用効果を検討した1)。Maccartneyらは防止策実施前(1988年11月-1992年4月)と後(1992年11月-1996年4月)におけるRSウイルス感染の罹患率*を比較し、相対危険度**を計算した。